さて、このシルクハットはどのようにして日本にはいってきたのでしょうか・・・まずは日本のシルクハットの歴史とでもいうべき物を知りたく、神田小川町にある、明治からの帽子店の老舗、タムラ帽子店に出向いて品物を持参し、見て頂きました。
タムラさんは70年以上店に立って日本の帽子産業を見てこられた方です。
まずは、シルクハットに関して、今回のような布地にシルクを張り込んだハットは現在ではまず見ないとの話でした。日本でも20年前までは一人だけその技術をもった方がおられたそうですが、今は日本においては制作できる技術者はいないとの事。1800年代後半には日本にも輸入されはじめ、タムラさんでも昔はChristy'sとのダブルネームで商品を発注して販売されていたそうです。
震災後(大正)でも有に2万ぐらいの価格だったらしく、当時の庶民価格とは大きくかけ離れていたのでしょう。
また、今回のようなハットケースは70年以上の経験でも見たのが初めてとの事で、良いものを見せてもらいましたと、微笑んでいらっしゃいました。しかしながら、その眼力をして商品としてはやはり、価値は低く、なぜなら、トップハットは通常被り物ではあるが、小脇に抱えて正装するケースが多くいわゆる、前縁のつばのシルクが持ち手によって、剥げてしまっているため、との事でした。。前縁はやはり大事ですよ・・との説明を受けうました。
なるほどと頷きながらも、その後はシルク生地の手入れの方法や、昔の早稲田学生帽・海軍帽や、大正時代に購入された方が亡くなり、そのお孫さんが、保管して欲しいとの事で持ち込まれた帽子やケースなど価値ある品の数々を見せて頂き大変興味深く、有意義な時間をもてました。
最後に、大切にしてくださいと、微笑まれて店を後にした次第です。お茶の水界隈の、楽器店や、スポーツ店が連ねる一角に頑として店を構えていらっしゃるその姿に感銘し、今回の購入でまた新たな発見ができたのかなと思っております。。。
2月のとある日、いつも立ち寄る骨董屋で出会いました。
なにげに店内を見渡すと、奥の方に真っ黒に汚れた革のケースがあって「なんだろな〜」と覗き込むとしっかりとしたブライドルレザーの革ケースではないですか。。革物には極度の反応をしてしまう私は気になりまずはその革のフタを開けると中にはなにやら、帽子が・・・ゆっくりヒッパリだすと、「おおお・・・」と、うなってしまいました。外の黒く汚れたケースとは逆に、真っ黒なシルクが張り合わされた見事なトップハットが輝かしくお目見えいたしました。中を覗き込むと「CHRISTY'S LONDON」と明記されてます。
さてさて、値段があまりに安いものなんで、これは戴くかと、即購入した次第です。家に持ち帰ってまずは、いったいどれぐらいの間放置されていたのかと思うぐらい、汚れたケースを時間をかけて磨き上げてゆくと、その内、ブライドルレザーのしっかりとした革が姿を現し、磨けば磨き込むほど艶を増していきました。磨き終える頃には、鼻の奥まで真っ茶色の状態!喉が痒くなる気分でしたが・・・
さて、このシルクハット(トップハット)はいかなる物なのか気になり悩んだ末、イギリスのハッターとして王室御用達のJAMES LOCKにメールで写真を貼付して問い合わせを試みました。数日後、返答がありとんでもない品物である事が判明!以下メール内容ですが要するに、現在では
手に入らず、生産もしていないとの事。また、ケースも含め大変な希少かつ、貴重品である事がわかりました。
Dear Mr. Yano,
Thank you for your E-mail which we found very interesting.
Christy's who made your top hat was founded in 1836 and are still in business. They are a famous hat company based now in the North of England.
Your hat is quite rare as silk top hats are no longer being manufactured. They ceased in 1962. The leather box too is quite valuable. They now sell at £1,000 each.
I hope this information is of interest to you. Thank you.
Yours sincerely,
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Christy'sは1773年イギリスはロンドンでTOPHATの製帽業者として創業致しました。
1800年代前半より、イギリスではTOPHATが流行して、そのころは紙にシルクを貼り付ける製法が取られていたようですが、今回のSILKHATの様に布地に貼り付ける様になったのは1830年代にはいってからとの事です。日本には明治・大正と貴族議員等の間に重宝されたそうです。今日においては、その特異性(正礼装)によって、一般的には見かける事自体ないですが、それでもこんな状態でGETできたのは奇跡に近いと本人も自負するこのごろです。