ローマ数字文字盤
 
"MARTIN & SAN  Cheltenham"文字盤、ムーブメントに刻まれている文字です。
イギリスでは多くの時計師が存在していました。その名は決してイギリスを代表する、いわゆる王室御用達ブランドとは違う、小人数で、または家族でコツコツと作ってきたすばらしい懐中時計達です。
イギリスにおける銀製品にはホールマークが刻まれいます。そのマークで銀を扱った商会都市名、制作年代が把握できます。物によってはマークが擦り減り判別不可能な物もあります。この懐中時計にはしっかりとホールマークが刻まれているため、ロンドンで扱われた物で年代は1880(4月)〜1881(3月)の製品である事が判別できます。ブルーエナメルのローマ数字が配されたハンターケースは、蓋が閉じたまま時間が判断できる様に工夫され、デミハンターと呼ばれています。かのナポレオンが戦時中、開けるのが面倒で、くり貫いたのが始まりと言われてるそうですがホントでしょうか・・・?この当時は”鍵巻き”といわれるバックに配された鍵穴でゼンマイを巻く仕組みになっており、針の調整も表の文字盤ガラスケースを開け、針の中心に鍵穴を合わせ針合せを行います。実際やってみるとけっこう面倒です。。また、石も年代の経過で擦り減り、ゼンマイを巻いていても平らな場所に置いたりしてるとゼンマイが止まってしまう事もあります。後年アメリカで人気を博す鉄道時計などは、どの状態姿勢でもゼンマイ巻きに影響されぬ様、ポジション(姿勢)設定でその時計のグレードが判断できます。
さてこの懐中時計・・・製作者として明記されてる人が知りたくて調べました。
”Watchmakers&Clockmakers of the world Volume U”という洋書にはイギリスにおける時計師が35000人近く明記されてあります。Martinといっても結構な同名時計師が存在してましたが、もう一つ明記されてる街名”Cheltenham”(ロンドンから西南の街)で時計師"Samuel Martin”の制作による物である事がわかりました。この洋書には編集した著者が自分で見た、または確認出来た懐中時計の年代も明記されており、著者によれば1830年にロンドンで確認された事が記録されております。私が所有するこの懐中時計は、ホールマークより1880年に制作された事は前にも述べたように、著者が記録した年から50年経過した懐中時計という事から、時計師
Samuel Martin氏の晩年に制作された時計である事が予想される訳です。そして21世紀も真近なこの2000年に、日本のとある街で今も変わらず、コチコチと時を刻み、インターネットで紹介されてるこの懐中時計。。。Samuel Martinさんは、120年後の今を予想しなかったろうな〜と思うと、良かった・・良かった・・と思わずにいられません。。製作者を思うと、これからも大切にしていこうと思うこの頃です。

デミハンター            バック鍵穴                            

イングリッシュレバー脱進機      ホールマーク