ユンハンス爺さんの顔・・御年90歳、年のわりには艶がいいでしょう・・・


JUNGHANS(ユンハンス)
1861年にドイツで誕生したユンハンス、設立後140年経ったその輝かしい歴史の中に抜きん出て語られるのが掛時計(柱時計)ではないでしょうか。当時アメリカでは、ウェルチ、セス・トーマス、イングラハム、アンソニア等すばらしい技術を持ったメーカーがありましたが、ユンハンスはキンツレ-と並び、当時世界におけるCLOCKメーカーの中でも、その名声はドイツ、ヨーロッパに留まらず、トップクラス・ブランドとして名声を馳せました。今でもクロック界、事にアンティークと呼ばれる世界ではその人気も絶大であり、美しく装飾された佇まい、精度、材質、耐久性にかけては揺ぎ無い存在を確立しています。


どこからともなく聞こえてくる懐かしいメロディー、そう・・幼かった頃、よく耳にしたこのメロディ、当時はなんとも思わず歌っていましたが、今、改めてこの歌の詩を読むとなんかジーンと、寂しさのような切なさのような、涙が溢れそうな良い詩だと思いませんか?・・・
                           

おおきなのっぽの古時計 おじいさんの時計
百年 いつも動いていた ご自慢の時計さ

おじいさんの 生れた朝に 買ってきた時計さ
いまは もう動かない その時計

百年 休まずに チク タク チク タク
おじいさんと いっしょに チク タク チク タク
いまは もう動かない その時計

何でも知ってる 古時計 おじいさんの 時計
きれいな花嫁やってきた その日も動いてた

うれしいことも 悲しいことも みな知ってる 時計さ
いまは もう動かない その時計

百年 休まずに チク タク チク タク
おじいさんと いっしょに チク タク チク タク
いまは もう動かない その時計

真夜中に ベルがなった おじいさんの 時計
お別れのときがきたのを みなにおしえたのさ

天国へのぼる おじいさん 時計とも お別れ
いまは もう動かない その時計

百年 休まずに チク タク チク タク
おじいさんと いっしょに チク タク チク タク
いまは もう動かない その時計



私達がまだ小さかったころ、家の中には当たり前のようにボンボン時計が掛けられてました。チクタクチクタク・・・響く音はまったく生活の中に溶け込んでいたような気がします。夜中に鳴る時報のチャイムがミョーに怖かった記憶もあったりします(笑)・・・現在では住宅事情もあってか、なかなか見かけなくなりました。

私の回りにも当たり前のようにデジタル化された商品がゴロゴロしています。そんな中にあってこの””ユハンスじいさん”は我が家の主でして君臨していただく事と相成った訳であります。

UNGHANS Made By Germany
1920’s−

高さ75センチ/幅35センチ

3つ穴ゼンマイ式型

Westminster チャイム

4所打ち/15分毎/

材質/タイガーメイプル



 "Grandfather's Clock" 日本語ではそのまま”おじいさんの時計”ですが、古時計、柱時計は海外ではこのように呼ぶようです。なんか愛情ある呼び方に思えますよね。。。このユンハンスの古時計、文字盤のマークから判断すると1920年代の生まれです。8つ星マークがその目印で、7つ星になると1910年代という事になります。ですので大正末期ぐらいというところでしょうか・・・日本では家一軒建てるのに2万ぐらいだったそうです。その時代にこの時計は一万ぐらいしていたとの事でした。当時においていかに高価な時計であったことは想像頂けると思います。
日本では精工舎(現セイコー)が有名ですが、当時ヨーロッパーからやってきたユンハンスは大衆時計として、あまりにもかけ離れた存在だったのではないでしょうか。
私がこの時計に初めて出会った時、まず目を惹いたのは写真でもわかるように、通称”トラ目”と呼ばれているこの木目でした。
メイプルというこの材質はカエデ科の一種になります。特徴としては音響特性が他の木材に比べて極めて優れ、特に高中音域に関してはその特性を存分に発揮します。ですのでギターやバイオリン等楽器の使用材として利用される事が多いようです。
また特性として強度、耐久性があります。身近なところではボーリングのレーンや、フィッシングロッドに使用されてます。
そして波状に木目が現れる独特の木目は、”タイガーメイプル”日本ではトラ目と呼ばれ、長年の経過と共にその色合いは飴色に変色していきます。この木材の特徴をそのまま生かし90年以上経過して、まさに深い飴色に変化し、その存在は他の掛時計や、置時計とは違って強烈な印象だったのです。その重厚感溢れる佇まいに圧倒されました。クラック等も無く、その状態からして、以前の持ち主によって大切に扱われていた事が伺い知れます。

私の中でユンハンスはバイオリン型や、絢爛豪華な装飾が施されたイメージがあったのですが、ご覧にょうにそのスタイルはどちらかというと家庭向き?・・・その材質等はさすがトップブランドとしての威厳があり、我が家の主として欲しいな・・・という思いが強烈に湧いてきました。
そして購入を決意したとどめはその音色でした。
「まずは音色を聞いて見てください・・・」と店主は時計の扉を開けると文字盤に空いた三つの鍵 穴に鍵を入れキリキリ・・・・とネジを巻き始めました。
振り子が左右に揺れ、「コチ・コチ・・・」とテンプが回りだし始めました。ゆっくりとした音が聞こえ出します。懐かしいその音色に耳を傾けていると、都会の時空とは違った世界が広がったような感覚・・・長針がゆっくりと12時に近づいてきました。瞬間、私の耳に聞こえてきたのは、”ウエストミンスターの鐘”私達がおそらく一番なじみ深い音色ではないでしょうか。小学校で毎日聞いた「キーンコーンカーンコーン・・・」でお馴染みのあの音色です。
たった四つの音から構成されたその音色は単音ではない、幾重にも重なったように聞こえ、材質もその音色の特性を生かしたメイプルですので非常に澄んだ和音が響き渡りました。すっかり聞き入ってしまいました。。。さらにそれは15分、30分、45分とそれぞれ違った音色を奏でるのであります。
時計用語として”ウエストミンスター打ち”と呼ばれるその音色はロンドン・ウエストミンスターの塔時計ビック・ベンの鐘の音か由来です。ウエストミンスターチャイムと呼ばれるその音色は何とも言いがたい静寂な時間を感じさせてくれたのです・・・

我に返ると、帰りの車のバックシートには厳重に包まれたこの柱時計がどっしりと腰をおろしているではありませんか!この柱時計さしずめ人間でいえば、杖を突いたご老人というところでしょうか・・・その威厳と風格を背中に感じながら、一路自宅へとゆっくり、ゆっくりと車を走らせたのであります。



入後顛末・・・
自宅に持ち帰って冷静に考えました。決して安い買物でなかったですし、購入自体は勢いも否めませんが、我が家の主としてお迎えすべく、子供もその大きな時計を目の前にして、私は「まずはご挨拶をしなさい。。。」と子供に威厳を与えるべく説明しましたが、よくわかってないようでした。(笑)
さて、どこに置くか・・・実はこれが最大の悩みでした。マンション暮らしには壁に掛けるという暴挙は出来ません。重さからしても間違いなく落下する恐れがあります。「しまった・・・ウウウ・・・」しばし、時計を見つめては部屋の隅々を見回し、悩んだ挙句、方法を見つけました。
時計の頭の部分の裏側にフック用の穴が一箇所あります。そこに後から紐をとおして、鉄アレイを垂直にぶら下げ、時計以上の重量を確保します。これで少なくとも前倒しは防げます。そして部屋の四隅にある壁を利用して、時計の四隅を壁に持たせ掛け、三角形に出来た後の隙間に錘を垂らし、台座は近くのディスカウントストアーで購入してきた足場用のイスを設置して無事完了しました。
我が家では丁度テレビの後になるため、台座自体もテレビの後で見えないため見た目も良く、まさに鎮座しております。必ずしも壁にかける必要はありませんし、工夫次第で何とかなります。購入の際はお試しください!

分解修理・・・
購入後、夜中のウエストミンスターの時打ちにも慣れ始めた頃、やはり一度はオーバーホールに出しておいたほうが安心という物です。近くにあるC.M.Wの資格を取得されている時計店に持ち込み、オーバーホールをお願いしました。約一ヶ月ほど預けまして無事しっかりと油を注入され、ホゾの減りも少なく、3万弱で綺麗になった次第です。ウエストミンスターは調整が難しく、大変なようですが、細かな調整の仕方や、音の調整についていろいろ教えて頂き、参考になった次第です。柱時計はとにかく平行に置かないと、狂ってしまいます。置き場所で再度角度等微調整して日差10秒以内という精度を誇っています。げにおそろしやユンハンス・・・
修理の際に、ムーブメントの写真をお願いしており、下の写真がそうです。。部品の一つ一つが大きくかなりしっかり作ってあるらしく、当時のドイツの興盛がしのばれます。

ムーブメント

ムーブメント2



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